三菱UFJの「エムット」は、もはや”どのキャッシュレスを使うか”ではなく、”どの陣営に属するか”の時代に入った象徴的な話。

三菱UFJグループが、新たなキャッシュレスブランド「エムット」を発表しました。三井住友の「Olive」に対抗するかのように、クレジットカードやQRコード決済などグループ内の金融サービスを統合し、グループ全体で数千万規模の顧客基盤を活用する野心的な戦略です。

先日、三井住友FGとPayPayの連携が発表されたばかりで、狙ったかのようなタイミング。むしろ、三井住友側がこの動きを察知して、先に発表したとも読めます。

いずれにせよ、銀行が再び”決済インフラの主導権”を取りに来ました。 キャッシュレスという観点で言うと、今回の発表で久々に「COIN+」のロゴを目にしました。

リクルートとの合弁会社「リクルートMUFGビジネス」が提供しているスマホ決済サービスで、加盟店手数料の低さを武器に展開していたものの、数千万ユーザーを抱えるPayPayやd払いなど既存プレイヤーの牙城を崩せず、ユーザー・加盟店拡大には苦戦していました。やはり、群雄割拠のキャッシュレス業界において、単独のサービス提供会社だけでは限界があるという事でしょう。

今回の「エムット」は、この流れを本気で巻き返すための”再設計”です。スーパーアプリ化を目指し、決済機能に加え、家計簿・投資・保険などの金融サービスをワンストップで提供する構想。カギは単体ではなく、グループ全体を巻き込む布陣で挑むのが今後のスタンダードになるとみています。

キャッシュレスの戦いに乗り遅れれば、「決済の主役」を失うだけでなく、銀行業そのものの存在意義すら揺らぐ時代に突入しているかもしれません。

三井住友陣営は「Olive」+「Vポイント」+「PayPay」という強力な布陣で、すでにキャッシュレス × 金融データの統合戦略を進めています。ユーザー接点ではLINEの月間アクティブユーザー9,700万人、Yahoo! JAPANの月間利用者数5,400万人というデジタル基盤も強みです。PayPayも登録ユーザー6,500万人(2024年8月時点)を抱え、強大な顧客接点を形成しています。 三菱UFJにとっては、ここで一手を打たなければ”構造的な遅れ”に繋がりかねません。

「エムット」は、その現状に対するグループ総出の逆襲の起点として、UX設計、加盟店戦略、特典経済圏づくり等々、ここからどれだけ本気で推進できるかが勝負です。

メガバンクでいえば、残るはみずほ銀行、りそな銀行、他にセブン銀行、auじぶん銀行、イオン銀行、ローソン銀行、ゆうちょ銀行、ソニー銀行など、”銀行を傘下に持つ企業”にとっても他人事ではないはず。

銀行単体での生存戦略はますます厳しくなり、ポイント事業のように大手企業が銀行との連携を画策する動きも加速しそうです。

そして利用者にとっても、キャッシュレスの未来は”使えるサービス”の時代から、”どの陣営に乗るか”の時代へと移り変わっていきます。

銀行主導の復権は起こるのか? エムットの登場でさらに加速するかもしれません。

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