課題
店頭やアプリ等でよく見る「30円引き」などと書かれた割引クーポン。来店促進や商品購入による単価アップなどの施策として利用されます。
そんなお客様向けに配布する割引クーポンは、自社原資で割り引くものもあれば、タイアップしてくださるメーカー様から販促費をご支援いただく事もあります。メーカー様からのご支援のもと、アプリ会員に割引クーポンを配布し、商品購入、売上拡大を図っていますが、運用上、いくつかの課題があります。
【課題①:配布したクーポンで売上を最大にする必要がある】
決められた予算の範囲で施策効果の最大化を狙うのは当然の事です。よって、クーポンを配布する事で商品購入はもちろん、来店頻度のアップや他の商品を同時に購入いただくお客様に配布する必要があります。
【課題②:あらかじめ決められた予算内で運用しないといけない】
予算が青天井なら全く問題ないですがそうとはいきません。例えば1,000枚分の割引クーポンを用意したとしますが、1,000名に配布したからといって1,000名全員が使ってくれるわけではないというのは容易に想像できるかと思います。ですから1,000枚利用される事を想定して5,000人に配布しますがこの何枚配布するかというのがポイントです。クーポンがたくさん使われると嬉しい悲鳴と思うかもしれませんが、例えば3,000人に利用されると当初の3倍も販促費がかかってしまいます。ですから日常的にこのように使いすぎるような状態になるのは問題ですし、もしかしたらクーポンを配布しなくてもそのお客様は商品購入してしていたかもしれないと考えると、いかに決められた予算の範囲で売上を最大化するかが重要になります。
【課題③:いかに予算を超過せずに運用するか事前に精度の高い予測が求められる】
1,000枚しか利用されたくないのであれば先着順にしたらどうか?というアイデアもありますが、クーポンがあるからとお店に来たのにレジで提示したら利用できませんでしたというのはせっかく来店いただいたのにがっかりさせてしまい顧客満足度が低下してしまうので現実的には無理なのです。かといって割引クーポンが使われすぎるとメーカー様の負担が大きくなりますし、全く利用されないとせっかくの販促費が有効活用されていない事になるので、それも避けないといけません。ですから高い施策効果が期待できるお客様層を抽出し、そのお客様の中でどれくらいの方がクーポンを利用するのか事前に予測し、全体のクーポン配布枚数を実施前に決める事が求められます。
ソリューション
これまで実施したクーポン施策の結果をもとに機械学習を行い、クーポン利用率の予測モデル構築を支援しました。
単にお客様ごとのクーポンの反応率を見るというだけではなく、商品そのものの購買状況やその商品のジャンル、対象となるお客様の購買パターンなど、多岐に渡る情報を駆使して予測モデルを構築しました。
ただ、それだけでは不十分です。
モデル構築と同時に大切にしたのは実務で活用できるUI/UXも同時に考え、メーカー様との商談の段階から活用できるレベルにした事です。
商談で、おおよその売上見込みやターゲットの話になる時に、予測モデルを使いながら、「配布するクーポンはこれぐらいの規模にしましょう」「割引額は50円引きではなく30円引きでも大丈夫そうです」と、簡易的なシミュレーションをしながら使える事を意識しました。抽出条件や割引条件などをチューニングする度に当然予測結果も変わりますが、なぜ変わったのか、どういう点が予測結果に影響したかも可視化し、予測結果を見ながら会話ができるようなものを構築しました。
アウトプット・実績
施策の都度、予測と実績を比較し、どれくらいの精度で予測できているか引き続き検証が必要なものはまだまだあるものの、現在は当初狙った通り、メーカー様との商談の場で担当者が予測モデルを使いながら商談をしていただくよう運用していただき、クーポン施策の効果アップや無駄なコストの削減にも貢献しております。